シーシャ(水タバコ)はおしゃれでリラックスできる嗜好品として若者に人気ですが、「タバコより体に悪くない」と思っていないでしょうか?
実はシーシャも紙巻きタバコも健康への悪影響があり、どちらが体に悪いかといえばどちらも有害です。
本記事ではシーシャとタバコの健康リスクを信頼できるデータで比較し、ニコチンや有害物質の含有量から具体的な健康被害、死亡事例、リスク回避法まで解説します。
WHO(世界保健機関)や医療機関の情報を参照しながら、シーシャとタバコはどっちがどれだけ体に悪いのか一緒に見ていきましょう。
シーシャもやばい?シーシャとタバコはどちらも体に悪い
シーシャもタバコもどちらも体に悪いのは間違いありません。それぞれの違いを踏まえつつ、以下で具体的な成分量や健康被害を比較していきましょう。
ニコチンや有害化学物質がもたらす体への悪影響は同じ
フルーツフレーバーの煙を水で濾過して吸うシーシャは、一見タバコより害が少ないように思えます。しかしそれは大きな誤解です。
確かに吸い方や仕組みは違いますが、シーシャにも紙巻きタバコ同様にニコチンやタール、一酸化炭素など多数の有害物質が含まれており、体への悪影響を及ぼします。
水を通せば害が軽減されると考える人も多いですが、実際には有害成分はしっかり含まれているのです。
シーシャは長時間の喫煙によって大量の煙を吸い込む危険性がある
またシーシャは1回の喫煙時間が長く、発生する煙の量も非常に多い点にも注意が必要です。
シーシャでは炭でタバコ葉を長時間加熱し続けるため、その間ずっと煙を吸い込むことになります。
その結果、同じ本数の紙巻きタバコと比べても、吸収してしまう有害物質の総量が格段に増えてしまうのです。
有害成分もタバコの数十倍含まれている
シーシャの煙には紙巻きタバコと同様のニコチン・タール・重金属・発がん性物質が含まれ、さらに燃焼に使う炭の影響で一酸化炭素(CO)も大量に発生します。
つまりシーシャだから安全ということは全くなく、むしろ吸い方次第では紙巻きタバコ以上に“やばい”可能性もあるのです。
シーシャとタバコの成分比較

ここではニコチン・タール・一酸化炭素の含有量や吸入する煙の量を比較します。
シーシャに含まれるニコチンはタバコの10倍
シーシャ用のタバコ葉には、フレーバーの甘い香りを加えてあってもニコチンが多く含まれています。
一部の研究では、シーシャ1回(1セッション)で取り込むニコチン量が紙巻きタバコ1本の2~3倍に相当すると報告しています。喫煙時間が長く、炭で加熱し続けることでニコチンが持続的に発生するためです。
しかし別の試験条件では、シーシャ1ボウルに含まれる総ニコチン量がタバコ数十本分に相当し、結果的に吸収されるニコチン量が「タバコの10倍」にのぼるとするデータも存在します。
フレーバーの種類や炭の温度、喫煙者の吸い方などで数値が大きく変わります。長時間の喫煙で深く吸い込む習慣があることから、ニコチンの吸収効率が上がる点も見逃せません。
シーシャで吸入されるタールはタバコの25倍
シーシャで吸入されるタールは、タバコの25倍に相当します。
タールは、タバコを燃やした際に発生する有害物質の総称で、発がん性を含む様々な健康リスクが指摘されています。シーシャは炭火でタバコ葉を長時間加熱するため、タールが多量に発生しやすいのが特徴です。
紙巻きタバコに比べると、一度に吸い込むタール量が圧倒的に高い可能性があるのです。水のろ過による除去効果は限定的で、実際には大量のタールを体内に取り込んでいることを認識する必要があります。
シーシャで発生する一酸化炭素はタバコの10倍
シーシャは炭を燃やしてタバコ葉を加熱するため、一酸化炭素(CO)の発生が紙巻きタバコ以上に増える傾向があります。シーシャで発生する一酸化炭素(CO)は、タバコの10倍に相当します。
COは血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬を阻害して、頭痛や吐き気、めまいなどの中毒症状を引き起こします。狭い室内や換気が不十分な場所でシーシャを吸うと、短時間でCO濃度が急上昇し、中毒に至る場合もあるので十分に注意しましょう。
シーシャで吸い込む煙の体積は紙巻きタバコ200本分
シーシャは1回の喫煙時間が長く、一度に吸う煙の量も膨大です。紙巻きタバコ1本を吸い終わるのにかかる時間と比べ、シーシャは30分から1時間以上吸い続けるケースが一般的なため、結果的に総煙量が大量になります。
研究によっては、1回のシーシャで吸い込む煙の体積が紙巻きタバコ数十本から200本分に相当するともいわれています。そのため、有害成分の身体への総暴露量も増え、健康リスクが高まる可能性があります。
シーシャとタバコによる健康被害を比較
次に、シーシャと紙巻きタバコそれぞれがもたらす健康被害について見ていきます。
それぞれ代表的な健康影響を比較しましょう。
シーシャもがん発症リスクを高める
がん(癌)リスクについて、シーシャも例外ではありません。
シーシャの煙には複数の発がん性物質(タール中に含まれる化学物質や重金属類)が含まれており、長期的には肺がん、口腔がん、膀胱がんなどのリスクを高めます。
実際、シーシャ喫煙と肺がん発症の関連が指摘された研究もあります。これは紙巻きタバコと同様であり、どちらも喫煙によるがんリスクを背負っている点では変わりません。
シーシャも慢性気管支炎や肺機能低下を引き起こす
シーシャは呼吸器へも影響があります。シーシャを習慣的に吸えば、慢性気管支炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を引き起こしたり、肺活量の低下といった肺機能への悪影響が生じる可能性があります。
長期間の喫煙により気道に慢性的な炎症が起こるのはタバコと同様で、咳や痰が増え、息切れしやすくなるなどの症状が現れる恐れがあります。
実際、シーシャ使用者でも肺機能指標の低下が確認されたとの報告もあり、決して無害ではありません。
シーシャも心血管系への有害影響をもたらす
心臓・血管への有害影響もシーシャとタバコの共通点です。
シーシャの煙には動脈硬化や心臓病の原因となる有毒物質(一酸化炭素や重金属類など)が多数含まれており、喫煙により心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクが高まります。
紙巻きタバコが心臓に悪いのはよく知られていますが、シーシャも同様で、長期的には高血圧や動脈の詰まりといった問題を引き起こしやすくなります。
シーシャもニコチン依存症のリスクがある
見逃せないのがニコチン依存症(中毒)のリスクです。シーシャの煙にもニコチンが含まれるため、習慣的に吸えばタバコ同様に依存症状が生じる可能性があります。
ニコチンは非常に強力な依存性物質であり、繰り返し摂取することで脳がニコチンを欲する状態(いわゆる「ニコチン中毒」)に陥ります。
シーシャはタバコよりも吸う頻度が少ない人も多いかもしれませんが、油断するとタバコ同様にやめられなくなる恐れがある点は知っておきましょう。
シーシャによる死亡事故事例
紙巻きタバコは主に長年の喫煙による慢性的な病気で命を落とすケースが多いですが、シーシャの場合は急性の事故による死亡リスクにも注意が必要です。
その代表が一酸化炭素中毒です。
シーシャは炭を燃やして煙を発生させるため、狭い空間で長時間吸っていると有毒な一酸化炭素(CO)濃度が上昇し、中毒症状を起こす危険があります。
実際、東京消防庁と日赤医療センターの調査によれば、近年シーシャによる急性一酸化炭素中毒の疑いで救急搬送されるケースが増加しています。
※参考 : 水たばこで一酸化炭素中毒疑い、救急要請多発 症状から気付きにくく | 毎日新聞
一酸化炭素は無色無臭で自分では気づきにくい毒ガスで、体内に取り込まれると血液中のヘモグロビンと結合して酸素運搬を妨げ、頭痛や吐き気、意識障害などを引き起こします。
重症の場合、脳や心臓への障害が残ったり、最悪死亡することもあります。
シーシャによる健康リスクを避けるためにできること
シーシャには上記のような様々な健康リスクがありますが、どうしても吸いたい場合はできるだけ健康被害を減らす工夫が大切です。
以下にシーシャの害を減らすためのポイントをまとめます。
利用頻度を減らす
シーシャの健康リスクを避けるためには、まず利用頻度を減らすことが重要です。
シーシャは長時間にわたって大量の煙を吸い込むため、ニコチンや一酸化炭素などの有害物質の摂取量が増えます。頻度を減らすことで、健康への影響を軽減することができます。
ノンニコチンフレーバーのシーシャを吸う
ニコチンを含まないシーシャを選ぶことで、ニコチン依存症のリスクを減らすことができます。ハーブシーシャはニコチンフリーの選択肢として人気です。
ただしニコチンなしでも健康被害リスクはゼロではありません。ニコチンを含まないシーシャでも、煙や蒸気を吸い込む以上、健康リスクが存在する点は認識しておきましょう。
換気の良い環境で煙を拡散させる
シーシャを吸う際には、換気の良い環境で行うことが重要です。
シーシャの煙にはニコチン、タール、一酸化炭素、重金属など有害物質が含まれており、換気が不十分だとこれらの濃度が上昇し、急性の一酸化炭素中毒や慢性的な健康被害を引き起こす可能性があります。
室内でシーシャを吸う場合は、窓を開ける、換気扇を使用するなどして、煙を拡散させることが推奨されます。
シーシャとタバコに関してよくある質問
シーシャと電子タバコではどっちが体に悪いですか?
シーシャと電子タバコはそれぞれ有害性が異なります。
シーシャはタバコ葉と炭の燃焼によるタールや一酸化炭素を大量に含む煙を吸いますが、電子タバコはリキッドを加熱して発生させたエアロゾル(蒸気)を吸うため、タールや一酸化炭素は発生しません。
有害物質という観点を踏まえると、電子タバコの方が健康リスクは低いといえるでしょう。
シーシャとベイプの違いはなんですか?
「ベイプ 」とは一般的に電子タバコのことを指します。シーシャ(水タバコ)が炭火でタバコ葉を燃焼させて煙を吸うのに対し、ベイプはリキッド(液体)を電気の熱で蒸発させて吸引します。
シーシャは燃焼を伴うためタールや一酸化炭素が発生しますが、ベイプは燃焼がないため基本的にタール・一酸化炭素はゼロである点が大きな違いです。
またシーシャは据え置き型で水パイプを使い皆で回し飲みするスタイルが多いのに対し、ベイプは携帯型で各自がデバイスを持ち歩き手軽に利用できる、といった使用方法の違いもあります。
ノンニコチンのシーシャも体に悪いですか?
ニコチンを含まないシーシャ(ハーブシーシャやフレーバーのみを加熱するタイプ)であっても、完全に無害とは言えません。
確かにニコチンを摂取しなければ依存症や血管収縮などニコチン特有の害は避けられます。しかし煙を発生させて吸い込む以上、一酸化炭素やタール類など喫煙による害はゼロにはならないのです。
実際、ある研究ではタバコを使わない「ハーバルシーシャ」でもタバコシーシャと同様に一酸化炭素や有害な化学物質が検出され、発がんリスクや心肺機能への悪影響が指摘されています。
ニコチンなしでもシーシャの煙そのものが有害だということです。ニコチンフリーだからと安心せず、吸い過ぎないように注意してください。
シーシャバーへは何歳から行けますか?
日本国内では20歳未満の喫煙は法律で禁止されています。当然シーシャ(水タバコ)もタバコ製品とみなされるため未成年(20歳未満)はシーシャバーでの喫煙はできません。お店によっては年齢確認が行われ、20歳未満の入店自体を断っている場合もあります。
シーシャバーはお酒を提供するところも多く、基本的には大人の社交場です。健康面から見ても未成年の喫煙は重大な害を及ぼすため、シーシャを楽しめるのは20歳を過ぎてからと覚えておきましょう。
まとめ
シーシャ(水タバコ)と紙巻きタバコ、どちらが体に悪いかという問いに対しては、結論として「どちらも体に悪い」と言わざるを得ません。
シーシャは煙もまろやかな印象がありますが、その実態は長時間で大量の煙を吸い込む危険な喫煙法です。
ニコチンやタール、一酸化炭素など有害成分の暴露量はタバコ以上になり得ますし、結果としてがん・肺疾患・心臓病・依存症といった健康被害のリスクもタバコ同様に背負っています。さらにシーシャ特有の一酸化炭素中毒事故のリスクも見逃せません。
シーシャはタバコの「安全な代替品」では決してなく、むしろ同等かそれ以上に注意が必要な嗜好品です。健康を守るためには「吸わない」選択が一番ですが、少なくとも「シーシャだから大丈夫」と軽く考えず、タバコと同じくらいヤバいものだと認識しておきましょう。